天草だより(おしらせBLOG) > インフォメーション国内・海外・業界

ホーム  / 海から海を学ぶ / カヌーについてVol.2 「知床半島カヤック水路誌」(令和4年9月30日掲載 著者 内田 正洋)


Learn the Ocean
from the Sea

本ページについて
日本は、四方を海に囲まれた世界でも有数の海洋国家であり、
その歴史や文化は海とは関わりの深い関係にあります。

 本ページでは、ユーザーの皆さんに少しでも海に興味を抱き、
親しんでもらうため、知識と経験豊かな海の安全推進アドバイザーによる
「アクティビティ」×「海に関する基本的な知識」×「安全」を交えた
コラムを掲載していきます。

知床半島カヤック水路誌.pdf

Vol.2 「知床半島カヤック水路誌」(令和4年9月30日掲載 著者 内田 正洋)

 以下   内田さん 勝手に抜粋してすみません。




海から海を学ぶ 02
「知床半島カヤック水路誌」
今年(2022年、令和4年)4月23日、知床半島の沖合で小型の遊覧船が沈没する事故が起こっ
た。乗客、乗員の26名全員が死亡、行方不明(2022年9月段階では7名)となり、国後島や遠くサ
ハリン島にまで漂着したご遺体もあった。
知床半島は、世界でも特異な自然条件があるということは、ある程度は理解されていることだ
ろう。とはいえ、2005年に世界自然遺産になったことで、この特異な自然を使う観光のあり方、
それをもっと深く考えるべきだった。それがかなう前に悲惨な大事故が起こってしまった。改め
て犠牲になった方々のご冥福を祈るとともに、これからの対策を考えていくのが、特に海に関わ
るプロたちに課せられた使命だと思う。事故は起こるべくして起こった気がしてならない。
知床沿岸は、シーカヤックの世界においては、その特異さによって世界でももっとも難しいレ
ベルにあるフィールドである。こんなフィールドはこの半島以外、日本にはない。初めてここを
シーカヤックで周回したのは、もう34年前になろうか。以来、自然遺産に登録されるまでは何度
も周回した。知床は、冒険に値するフィールドであり、最初に一緒に回った友人は、その後この
フィールドでシーカヤックによるリアルなエコツアーを始め、今に至っている。彼はヒマラヤの
登山家でもあり、雪山のプロでもあり、冬になると北海道西部のニセコ町で日々雪崩情報を出
す。そんな彼が主催するエコツアーは『知床エクスペディション』と呼ばれている。知床を旅す
る時は必ず一緒だったし、彼の経験や知識から来る判断力を私は学んでいた。
そして彼は、知床の経験を元に南米大陸最南端のさらに南にあるケープホーンへの遠征(エク
スペディションだ)や、アリューシャン列島への遠征を幾度となく行い、流氷が去った後の知床
エクスペディションを継続している。日本では最長老、75歳のシーカヤックガイドである。
その彼が、事故が起こる直前の3月、知床財団と羅臼町の協力により、2004年に発行した『知
床半島カヤック水路誌』の改訂版を出した。財団の羅臼ビジターセンターで入手できるが、部数
が少ないため、希望者には行き渡らないかもしれず、そのためpdfにしてブログにもアップしてく
れた。
知床沿岸は、このコラムのテーマ通りに、海から海を、さらには海から自然全体を学ぶための
優れたフィールドだが、それは一方で厳しさを学ぶフィールドでもある。海や自然を学ぶという
言葉には、学ぶことで安全をある程度までは担保できるという意味が含まれる。基本的に自然は
危ない。知らないでは済まされない悲劇がすぐに起こる。それが自然だし海だ。
もちろん、自然がなければ私たちは生きてはいけない。自然は私たちに恵みを与えてくれる。
食べるものはすべて命であり、すべてが自然からの贈り物。だから「頂きます」と私たちは言
う。そして自然から何かを賜ること、それを「旅」という。旅という言葉は「賜ぶ(たぶ)」や
「食ぶ」から来ているのだ、と書き残してくれたのは民俗学者の柳田國男だった。「たびたまう
(賜び給ふ)」という言葉は今も辞書に載っている。「お与えくださる」という意味だ。
ちなみに、水路誌というのはコーストパイロットやセーリングディレクションともいい、日本
では海上保安庁が発行している。沿岸航行のための指示書。当然ながら船舶のための書であり、
シーカヤックのためのものではない。しかし知床の場合は、シーカヤックのための水路誌が必要
だと考えて小冊子にした。それほど難しいということだ。
ということで、その彼は、新谷暁生(しんやあきお)さんという。普段はニセコで『ロッジ・
ウッドペッカーズ』を営んでいる。

Add Comment

このアイテムは閲覧専用です。コメントの投稿、投票はできません。