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秋の気象遭難


トムラウシ山 遭難事故中間報告書の要旨

「気象人」 

 皆さんの場所でも風が変わっているのかな。
 
 レースが終わってから、全く時間が無い。
いまだ、9艇のカヤックが水洗いを待ったまま放置。
気がつけば9月。

 遠く有明海に浮かぶ入道雲の発達の早さを見れば
海上気象の激烈な変化も当たり前なのだろう。
 今年は霧島、阿蘇山の風に注目しています。

 
 今年も残り4ヶ月。無事故を全うすべく、
秋の気象遭難を省みる。
 詳細は 遭難事故調査報告書 へ



トムラウシ山遭難事故中間報告書  要旨 - 詳報 - 共同通信

 日本山岳ガイド協会のトムラウシ山遭難事故調査特別委員会が
7日に公表した中間報告書要旨は次の通り。

 【事故原因】

 ▽現場の判断や対応

 どういう天候判断でヒサゴ沼避難小屋を出発したのか、
ガイド間で危機意識を共有できていなかった。
参加者の体調などへの配慮、服装のアドバイスがなかった。
出発時間を午前5時から5時30分に変更したが、リーダーの迷いが表れている。

 歩行時に標準のコースタイムの2倍近い時間がかかったのに、
ピンチという認識が薄かった。
低体温症の前兆が表れている参加者に何の対応も取らず、防寒対策や行動食、水分補給のアドバイスをしていない。
北沼付近で吹きさらしの中、何の指示もなく、
長時間停滞したことがパーティーの運命を決定付けた。

 行動不能になりビバークすることになった1人の参加者のため、
パーティーの責任者のリーダーが後方に残ることは登山の常識では考えられない。
さらにビバーク隊と本隊に分かれるが、分散の危険性を事前に認識していたのか。
分けなければ全員でビバークできた。低体温症の症状があるガイドが本隊を率い、
元気なガイドが残ったのは適切ではなかった。

 ▽ガイドの力量

 危急時における対応経験や危険予知能力を持っていたか疑問がある。
ガイドの判断の迷いや遅れによって対応が後手に回り、
パーティー全体をどんどんピンチに追い込んでいった。
厳しい状況下でのパーティー行動経験が足りなかった。
ガイドと参加者との体力差が大きく、
参加者の疲労度をどこまで認識していたのか、状況説明を常に行わず、
体調を確認していなかった。

 ▽ツアー会社の企画や運営、危機管理

 1991年の創業以来、年々急成長し、
社内のリスクマネジメント体制ができていなかったのではないか。
現場でのあらゆる判断をガイドに任せ、
何かあれば会社が全面的に責任を負うとしているが、
登山としての安全性を重視した判断をガイド側から主張できる体制、
指導があったかが問われる。

 研修会で低体温症が取り上げられておらず、
天候悪化に伴うリスク回避に対する具体的な判断基準がなかった。

 ツアーそのものの脆弱ぜいじゃく性(参加者のレベル把握が不十分、簡素な食事、
エスケープルート・予備日なし、ガイドの土地勘なしなど)を認識せず、
ガイドに伝えていなかった可能性がある。
予備日がないので停滞できないなどというプレッシャーを
ガイドが感じることはあるだろう。危急時の連絡方法が心もとない。
電波の通じない山域での連絡方法に明確なルールがなかった。
トランシーバーは使われた形跡がなく、ラジオも持参していない。
避難小屋泊まりを前提としたようなツアー募集は小屋の使用目的から逸脱している。

 ツアー登山の定着とともに「ツアー登山客」という層が生まれ、
「ツアー登山ガイド」というカテゴリーが出来上がりつつある。
そのリスクにツアー会社もガイドも敏感でなければならない。

 ガイド3人のうち2人が今回のコースが初めてで、お互いに面識がなかった。
参加者の基準についても危険度の高いコースではもう一歩踏み込んだ顧客管理が望まれる。

 ▽参加者の力量と認識

 ツアー会社の参加基準を全員がクリアしていたが、
悪天候下の経験や体力となると、一部の人は不足していた。
参加者はパーティーの一員として、自分の体力レベルについて客観的に認識していたか。
ツアー登山というシステムに依存し過ぎず、
最終的に自己責任が基本となるという認識を持っていたかどうか。
現在地の確認や時間管理、体調把握などの認識が不足していた。

 装備について、特に問題はなかったが、
危急時にいかに活用するかという知識が足りなかった。
食料計画が貧弱で、悪天候下ではエネルギー不足だったと思われる。

 【低体温症】

 参加者ほぼ全員が低体温症について知らなかった。
ガイド2人は低体温症は知っていたが、夏山で起こり得る可能性について深刻に認識していなかった。
出発して約5時間後、北沼付近にパーティー全員が到着。
その後、約1時間しゃがんだ姿勢で待機したことで、ほぼ全員が低体温症になる。
この時間の長さが今回の遭難の重大なポイントとなった。
発症から死亡までの推定時間は最も短かった人で2時間以内で、
低体温症が加速度的に進行、悪化したと思われる。

 【気象】

 今回の遭難は、低気圧の通過とその後の寒気の流入による悪天候により
引き起こされた典型的な気象遭難だ。夏季にもかかわらず、気温、風、降水などで厳しい気象条件下にさらされ、
低体温症を引き起こしたのが主な要因となった。

 事前の天気判断で悪天候が十分予想されていたのに、計画に反映されなかった。
高山では天気回復が遅れることも考慮せずに、
当日朝、平野部向けの予報を山岳に当てはめて出発の判断をした。
出発後、稜線りょうせんで行動の限界を超えるような強風に遭遇したが、引き返さなかった。
強風や衣類のぬれにより、低体温症の危険度が一気に増すことや、
北海道の高山(夏季の低温)への認識が不足していた。

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